「産業革命以来、最大の変革」 国内外で気候テックが注目される理由 [The Asahi Shimbun]

Click here to read my feature article on climate tech startups in The Asahi Shimbun! For this article, I conducted an interview with a co-founder of the climate tech job board Climatebase. The article is only in Japanese, and marks my third byline in a Japanese article for Asahi.


「産業革命以来、最大の変革」 国内外で気候テックが注目される理由

市野塊、米テキサス州オースティン=合田禄/取材協力=エイダン・リリーエンフェルド2023年9月4日 7時00分

今年の主役の一つは「気候テック」だった。

 毎年3月に米テキサス州で開かれるテックイベント「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」。過去には、ツイッターや配車サービスのウーバー・テクノロジーズ、民泊仲介のAirbnb(エアビーアンドビー)などのスタートアップ(新興企業)が世界的な注目を浴びるきっかけとなった。

 魚類にやさしい水力発電のタービン開発、溶かした塩を使った蓄熱・蓄電技術、醸造技術を使ったパーム油の代替品――。

 20億ドル規模のベンチャーキャピタル(VC、投資会社)「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)」のタラ・バンサル氏は、これらを手がけるスタートアップの幹部らと登壇。「意識の変化を感じる。5年前にはなかったことだ」と話した。

 気候テックとは、温暖化問題の解決につながるテクノロジーのことだ。原因となる温室効果ガスの排出を減らす技術だけでなく、温暖化の影響への備え(適応策)を進めたり、気候変動への理解を深めたりする技術やサービスも含まれる。

 米調査会社「Holon IQ」によると、気候テックへの投資は2022年に701億ドル(約9兆8千億円)となり、前年比で89%増えた。今年1月時点で、気候テックで評価額10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」とされるのは米国や中国を中心に世界で83社にのぼるという。

 深刻化する気候変動に対し、各国は脱炭素化を加速させている。

 エネルギー、産業、農業、モビリティー、自然保護など、すべての分野での大転換が求められることになり、これを実現するためには巨大な金と人が動く。国際エネルギー機関(IEA)の試算では、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の目標達成に必要な費用は約8千兆円。気候テック企業は、これをビジネスチャンスとみる。

 米国で気候変動対策を担当するジョン・ケリー大統領特使は「産業革命以来最大の変革となるだろう」と語る。(米テキサス州オースティン=合田禄)

次の1千社のユニコーンは…

 SXSWにも登壇した投資会社「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ」は、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らが設立した。ジェフ・ベゾス氏(アマゾン創業者)、孫正義氏(ソフトバンク)らも名を連ねる。20億ドル(約2800億円)の投資先は、新型の全固体電池や核融合炉、二酸化炭素貯蔵などの新技術を開発するスタートアップが中心だ。

 世界では毎年計590億トンの温室効果ガスが排出されている。国際ルール「パリ協定」の下、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるという目標達成には、2050年までに実質ゼロにする必要がある。

 IEA(国際エネルギー機関)によると、既存の技術でも排出の半減はできるが、残り半分はまだ実証段階にある技術に頼る必要がある。「今後10年間に大きな技術革新の努力が必要」だとする。

 「世界最大の投資会社」とされる米ブラックロックのラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は「次の1千社のユニコーン企業は、検索エンジンでもメディアでもなく、グリーンな水素や農業、製鉄、セメントを開発するビジネスだ」と述べる。

 気候テックは、「ビッグ・テック」と呼ばれるIT大手などで大量解雇が相次いだことで、そこにいた人材をひきつけている。

「ウーバー7番目の社員」が起業したのは…

 ウーバーの7番目の社員、マシュー・コッチマン氏(35)は昨年、独立し、樹木葬を手がける会社を立ち上げた。遺体を火葬せず独自の生分解性のシートと菌類を含んだ土に埋め、若い木を1本植える。さらに1人あたり1千本の植樹をする。木を植えることで二酸化炭素を貯留することができるという。

 コッチマン氏は「大企業に就職したり、フェイスブックやグーグルで働いたりということは、世界をより良くしているのだろうか」と疑問に思ったのだという。

 米ソフトウェア会社で働いていたアレックス・ハロスさん(27)は今年、企業の二酸化炭素排出量を算出するソフトウェアを提供する米企業「パーセフォニ」に転職した。「気候変動は我々の世代にとって最も深刻な問題だ。テック企業があらゆる産業の脱炭素化を導くと考えている」と語る。

 気候変動業界に特化した人材紹介会社CLIMATEBASEによると、同社のサイトを訪問した求職者は昨年8月から今年3月で約6倍に増えた。共同創業者のジェシー・ハイネス氏は「テック企業での大量解雇は気候テックに追い風になった。能力がある人たちを数多く雇うことができる環境ができた」と指摘する。(米オースティン=合田禄)

 気候テックの波は日本にも届き始めている。

国内200社、大手も参入

 6月末、東京大学で気候テックに関するイベントが開かれ、起業家や投資家、研究者ら400人超が集まった。

 「技術革新がなければ地球は滅びる。人類のためになることをやり、その先に経済的な成功もある」

 スタートアップ企業「エレファンテック」の清水信哉社長は力を込めた。プリンター技術を応用して、使用する銅や排出される二酸化炭素を大幅に抑えた電子基板を作る会社で、計約90億円の資金調達にも成功。国内で勢いのある気候テック企業の一つだ。

 日本の気候テックは200社ほどとみられている。

 企業の排出量を計測し、可視化するクラウドサービスを提供する「ゼロボード」(東京都港区)。昨年の提供開始から1年ほどで2千社以上に導入された。昨年4月から東証プライム上場企業に対し、排出情報の開示が義務づけられたことも追い風になった。

 渡慶次(とけいじ)道隆社長は「可視化は『体重計に乗る』のと同じで、エネルギーにかかるコストや排出量の削減につながる。波及効果は大きい」と語り、東南アジアへの展開を進めている。

 国内の大手企業も、気候テックに可能性を見いだし始めた。

 再生可能エネルギーの電力小売業者として英国で急拡大する「オクトパスエナジー」は21年、東京ガスとの合弁会社をつくり、日本市場に参入。契約は今春時点で16万件を超えた。「ブランドがまだまだ知られていない中で、手応えを感じている」。合弁会社の中村肇社長はこう語る。(市野塊)

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